大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和43年(ワ)2000号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第一、先づ、被告の本案前の申立につき判断するに、<証拠>によれば、原告が昭和三一年六月二三日頃家出をしてその所在が不明となり、これがため同女の次男小林久樹の請求により昭和四二年一一月二二日横浜家庭裁判所において同人が不在者原告の財産管理人に選任された(同家庭裁判所昭和四二年第二八八〇号事件)が、その後も同女の生死は不明であり、従つて原告につき失踪宣告の要件が具備していることが認められ、他面<証拠>によれば、右財産管理人ではなく本件交通事故の損害賠償責任者として訴えられている被告が本件訴訟中に利害関係人として、横浜家庭裁判所に対し原告の失踪宣告の申立をなし(同家裁昭和四四年第七四五号事件)、昭和四五年二月二六日付第一二九五五号官報に公示催告が公示されたことが認められる。

しかし、失踪宣告の要件を具備した不在者と雖も、家庭裁判所の任意的判断による失踪宣告を受けて始めて死亡したものとみなされるのであり、それ迄はあくまで不在者たるにとどまるものであることは法文上明白であるのみでなく、およそ民法第三〇条に所謂利害関係人とは失踪宣告を求めるにつき法律上正当の利害関係を有する者を指称し単に事実上の利害関係を有するに過ぎずして失踪宣告の効果を他の訴訟事件の証拠資料に供しようとする者はこれを含まないと解するを相当とする(大審院昭和七年七月二六日決定及びその原決定、大審院民事判例集第一一巻一六五八頁以下参照)ところ、原告が未だ失踪宣告を受けていないことは前認定事実上明らかであるから、原告が当事者能力を有することは勿論、更に本件訴訟について当事者適格を有すると解すべきであるのみでなく、本件訴訟の進行中に原告の相続権を否定し、その当事者能力及び当事者適格を失わしめる結果を招来する被告の前記失踪宣告の申立が許さるべきか否かについては多大の疑問があるから、結局被告の申立は理由がなく、却下を免れない。(若尾元 石藤太郎 西理)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!